2013年08月02日

夏は読書に限る!?

エアコンの効いた部屋でのんびり読書。
そんな快適な毎日が過ごせたら……。
実際は汗だくになって色んなことしてます。
ただ、ここのところ涼しくていい感じ。
さて最近読んだ本。

吉田修一著「路(ルウ)」

商社の現地駐在員・多田春香
商社マン・安西
台湾の大学生
台湾で育ち終戦後日本に帰った老人
日本で建築家として働く台湾人青年
それぞれの視点の日常が、台湾新幹線の着工を巡って少しずつ絡み合い始める。
春香が6年前に旅した台湾で出会った人への強い思いが、不思議な縁を繋いでいく。

読みごたえがあった!
大いに楽しみました。
お薦め。


絲山秋子著「忘れられたワルツ」

東日本大震災の前後の生活を、人間関係を軸に描く短編集。
はっとするような設定も多く、
それぞれに興味深く読んだ。
お薦め。


西加奈子著「白いしるし」

失恋の打撃からの立ち直れない時間を長く過ごした画家の主人公。
二度と恋などしないと思っていた。
友人に連れられて行った画家の個展で、その画家の絵を見た瞬間から心を奪われてしまう。
辛い恋が始まる。
関西弁の会話がいいなと思う。
切なさが増幅する。
少し前に読んだ「炎上する君」に比べると数段好き。


原田マハ著「ジヴェルニーの食卓」

短編集だけれど、表題作だけとりあえず読んでみた。
モネの絵を、人を、尊敬し愛した一人の女性の視点から、クロード・モネを描いている。
睡蓮の池、彩り豊かな庭。
TVで観たことのあるその庭や、実際規模は小さいけれど再現されている直島のモネの庭を思い浮べながら読みました。

ちょっと苦手感を持つ作家さんなんだけど……。
他のも読んでみます。
「楽園のカンヴァス」挫折経験者の私。
その時の自分の状況に左右されるから。
気が向いたらもう一度読んでみようかなと。


湊かなえ著「望郷」

瀬戸内海に浮かぶ島を舞台に描かれる短編集。
島を去る者、島へ帰る者、それぞれが深い事情を抱えている。
推理作家協会賞受賞作「海の星」は推理作家の目で読むとやっぱりすごいんだろうな。
どの話もそれなりに面白く読んだけれど、
やっぱりミステリーの短編は物足りないかな。



これらを読みつつ、合間に中島誠之助さんのエッセイを二冊読了。
面白かった。
今抱えている本がたっぷりあるので、ちょっと幸せ気分♪










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2013年06月16日

読書の時間

小川洋子
「シュガータイム」
「ホテル・アイリス」
 どちらも冒頭からその世界に引き込まれた。小川さんならではの世界。
 「シュガータイム」は突然異常な食欲に支配される女子大生が主人公。毎日食べたものを記録する日記。
 そこにはえんえんと大量の食物が書き連ねられる。
 神道系の教会に間借りする主人公の元へ引っ越してくる奇病を持つ弟。後に別れがやってくる恋人、友人達。
 主人公と関わる人々がリアリティを持って浮かび上がる。
「ホテル・アイリス」は所謂SMなので、痛いのが苦手な私には読んでいる間中ちょっと苦しかった。
 目が離せなかったのは小川さんの作り上げた島や港町の情景や、登場人物の動きがくっきりと立ち上がってきたからでしょう。
 どちらも好みが分かれるところかもしれませんが、小川さんの世界が好きならお薦め!
 
柴崎友香
「ドリーマーズ」
 日常を淡々と綴る連作短編。柴崎さんならではの色合い。
 夢と現実。生と死。曖昧な境目。
 人が抱える不安や恐れを鮮やかに紡ぎだしている。

伊集院静香
「旅だから出逢えた言葉」
 伊集院氏の出会いの数々は何か大きなものに守られていると感じる。
 が、それ以上に出会うべくして出会ったとも。
 自分に引き寄せる感覚が優れているのだろう。
 そこが魅力なんだろうなと思う。
 人しかり言葉しかり。

島本理生
「よだかの片想い」
 相対的には島本さんらしい(笑)暗い話。
 顔に痣を持つ女子大生が主人公。
 編集者の友人から顔に痣や怪我を負った人へのインタビュー企画を持ちかけられた時から、彼女の成長物語が始まる。
 映画監督との出会い。恋。
 引き込まれて読んだ。
 なんだかんだ言っても結構好きかも。
 
香川照之
「市川中車 46歳の新参者」
 俳優香川照之が中車を襲名するに至る思いや、父猿扇との確執、息子団子への親としての眼差し。
 歌舞伎の家に生まれながら歌舞伎とは無縁な人生を過ごした氏が、家業を継ぐと決めた強い思いが伝わってくる。(ただし文章は語りおろし)
 襲名披露公演までの涙ぐましい修業の日々は痛々しくもあり、ユーモラスでもあり。
 生きることは行といい切る氏の自分に対する厳しさが印象に残った。

最近読みごたえのある本に出会えない。
本屋には頻繁に足を運んでるんだけどなぁ。
嗅覚が鈍ってるかも……

 
 


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2013年05月08日

村上春樹著「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼」・公開インタビュー

昨日の新聞各紙に取り上げられていた村上さんの公開インタビュー。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130506-00000534-san-ent
私も二紙で読みましたが、内容は概ね同じ。
東京新聞は一面で伝えていました。
この公開インタビュー、河合隼夫物語賞・学芸賞の創設を記念して行われたらしい。
お二人の対談を読んだことがありますが、なるほどそういうことで珍しいインタビューが実現したんですね。
当選されたのはハルキストの方々ですよね。羨ましい限りです。(私は開催も知りませんでしたが)
さて、発売三日後くらいに予約していた本書が手に入り、
丁寧に読もうと思いながら一気に読んでしまいました。
展開がちょっとしたサスペンスなので、切れ切れにはできなかった。
主人公は若き日に友人たち(4人)から絶縁され死を考えるほどの打撃を受ける。
その真相を友人たちに会いながら探っていく物語で、
村上さんはご自分も似たような経験をしたことがあり、
「これは成長物語で、成長を大きくするためには傷も大きくなければいけない」
と語られたとのこと。
また、
「魂のネットワークみたいなものを作りたい。人は魂の中に物語を持つ。それを、本当の物語にするには相対化が必要で、そのモデルを提供するのが小説家の仕事」
との言葉、なるほどそうなんだなぁ。
言葉にするのは難しいこと。
本書は、短編のつもりが長編になったと話されたらしいが、
それも興味深く、嬉しい(この気持ちは微妙で多くは言えないけど)ことでした。
読まれた方には、物足りないと思われた方もいるでしょうね。
「1Q84」が大長編だっただけに。
うまくは言えないけれど、読後は流れがあると思いました。
お薦めです!

他の本に関しては少しずつ感想をアップしていきま〜す。
posted by strauss at 11:57| Comment(0) | 本、雑誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年05月02日

読書の時間

写真のアップロードがうまくいかないので、
読書の方を先に。
取りあえず、3月末から読んだ本の数々。

宮本輝「水のかたち」
平野啓一郎「空白を満たしなさい」
川口規弘「芥川賞物語」
津村節子「夫婦の散歩道」
江國香織「赤い長靴」
江國香織「薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木」
吉村昭「縁起のいい客」
吉村昭「史実を歩く」
村上春樹「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」

どれも面白く読みましたが、長ーくなるので、
今日は「芥川賞物語」を。

1935年第一回石川達三「蒼氓」から2012年の第147回鹿島田真希「冥土めぐり」まで、
誕生の経緯から、回毎の候補作、受賞作をあげ、特筆すべき事件なども織り込まれた、芥川賞を巡るお話。
当初の選考委員は、
菊池寛、佐佐木茂索、川端康成、久米正雄、児島政二郎、佐藤春夫、瀧井孝作、谷崎潤一郎、室生犀星、山本有三、横光利一。
読売新聞に、評論家や左翼系の作家が加わっていないことへの苦言が。

一、広く一般から原稿を募集。(一般公募もあったんだ!)
二、作家や評論家からの推薦。(これは今でも裏でありそう)
三、文芸春秋社内で独自に候補を選出する。(まあ、これが妥当なところでしょうね。つまるところ一出版社の賞なんだから)
一応三つの決まりごとがあるも、
明確な選考ルールはなし。以後、場面、状況に応じて変わっていく。
有名な事件として、
三十五年に、落選した太宰治が、川端の書いた選評や生活態度を批判。
(文芸春秋は誌面をにぎわすための一事業と考え、選評が発表されると、それに対する感想を落ちた候補者に求めたそうで、驚き。文芸春秋の戦略かと著者)
その後、佐藤春夫に賞を与えてくれと売り込み。(太宰が売り込み!?)
処女作品集「晩年」を刊行するが、漠然とした予選選考が原因で候補にならず。
一度候補になった作家は再び候補に上げずという内規があって、(今では考えられないですね)
規定の拡大解釈や、その場その場で基準を決めたり、苦心の滑り出し。
その曖昧さで落選した作家も多い。
第三回で一般公募を打ち切る。(レベルが水準以下だったそうな)
戦後は運営方針が変わるが、芥川賞が扱うべき新人の線引きは曖昧なまま。
選考委員は商業誌のものは芥川賞にしないとしたが、
文芸春秋社は文学界、新潮、群像などに広げ、
五十年代から徐々に権限は選考委員から文芸春秋社に移っていく。
第六十二回頃から、芥川賞は売れるというイメージが固まる。
関連書籍の刊行も盛んに行われる。
1978年当時、毎日新聞に掲載された芥川賞の費用は、一回600万円。(すごい!)
落選した村上春樹「風の歌を聴け」について興味深い箇所がある。
村上授賞せずの判断について、選考委員の吉行淳之介は、
「芥川賞というのは新人をもみくちゃにする賞、それでもかまわないと送り出してもよぴだけの力はこの作品にはない。この作品の強みは素材が十年間の発酵の上に立っている所で、もう一作読まないと心細い」と。
処女作に芥川賞を授けることへの躊躇が、不採用理由。
芥川賞騒動とその影響を受ける受賞者の歩みを委員の立場から配慮。
異常な過熱ぶりだったことが伺える。
実際現在でも、芥川賞は売れていると思う。その後何作かはいけるのじゃないだろうか。
面白い読み物でした。
芥川賞に興味がある方にはお薦め!

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2013年03月04日

国際文芸フェスティバル

3月1日〜3日の三日間、日本財団主催の国際文芸フェスティバルが開催されました。
海外の作家、翻訳家、装丁家を招き、日本の作家とセッションを行いました。
申し込んだとき、既に1日目と2日、3日目の午前中は定員に達していて、
土日の午後からのセッションを聴いてきました。
2日
場所は六本木。
国際会館でのセッション。
先ずは「翻訳について語るとき我々の語ること」(村上春樹の翻訳書「愛について語るとき我々の語ること」にひっかけているんでしょうね)
モデレーターは柴田元幸氏(アメリカ文学研究者、翻訳家、小説家)
小野正嗣、マイケル・エメリック、レクシー・ブルームのお三方を迎えて、翻訳についてのお話。
マイケル・エメリック氏は日本文学の研究者で、よしもとばなな、川上弘美などを翻訳しています。
日本語も堪能で話術も優れていて、内容も面白かった。
レクシー氏は編集者。
小野氏は今期芥川賞候補になった「獅子渡り鼻」の著者です。
翻訳に際しての、例えば、音であるとか方言であるとか、お話などとても興味深くききました。
途中で「獅子渡り鼻」のラストの一部が英語で朗読されました。
日本語の方はプリントアウトされていましたが、英語の方がいいと思ったのは、他国の言語で聞く方が直接的でない分受け止めやすかったからかも。それはもちろん私が英語をあまりりかいしてないからにすぎないんですけどね。プリントアウトされたものを読んでいるだけで私はちょっと耐え難かった。客観的になれなかったということでしょうね。
全文を読んでないので、一部だけ取り上げて云々するのは間違いなんですが、ラストだけで私には哀しくて読めない気がしました。でも読まなくちゃねぇ……。
次のセッションは「いつも旅の中」(こちらは角田光代の著書ですね)
モデレーターはイギリス人の編集者ジョン・フリーマン。
角田光代、ピコ・アイヤー、ジェフ・ダイヤーのお三方で、旅と書くことの関係など、これも興味深い話が続々と出てきました。
角田さんのタイについてのエッセイや、やタイを舞台にした物語が好きだから、このセッションをとても楽しみにしていました。
ピコ・ワイヤー氏はインドの方ですが、世界各国を旅しながら紀行文の名手として定評がある方のようで、現在は奈良にお住まいのノンフィクションライター。
ジェフ・ダイヤー氏はイギリスの小説家で、村上氏がその著書を翻訳しています。
海外の方から見た日本人の特性なども面白かった。
国際文化会館のセッションはこれで終了。
次は場所をライブハウスに移動。
サプライズセッションで、若い女の子のラッパー「DJみそしるとMCごはん」の登場。
歌詞がレシピなんですが、これがもうちょっと恥ずかしくなるくらい下手で、
これは私の感性が鈍ってしまったのかと落ち込むほど。
ひどい、お金返して!って思ったほど(あ、でもこれ無料だったんだ)
でも後で考えると、やっぱり人選には意味があったんだろうと思い直した。
捉えどころのないホンワカムードが欲しかったのかも。
次に登場したのは目黒で一番気障な詩人、菅原敏。
始まる前に著書を購入したけど、朗読があまりにひどかったので頼み込んでお返ししました。
もちろん売り場の女性がお勧めですと言ったので買ったから、その方は気持ちよく引き取ってくれました。
じっくり読めばよかったのかもしれないんだけど、詩人のパフォーマンスから絶対に面白いとは思えなくて。
これにも結構落ち込んじゃったかな。
その次は小説家、温又柔さん。とっても愛らしい方でした。自作の朗読。
ここでやっとしっくり落ち着き、
アメリカの方で、日本の芸大を出た尺八奏者、クリストファー遙盟氏の素晴らしい演奏に聞きほれました。
この後のセッション「オール・ザットジャズ」が夜の部のお目当てです。
作家平野啓一郎、ジェフ・ダイヤーのお二方とモデレーターは松屋仁之氏。
ジャズについて大いに語るといったセッション。
平野さんの近著「空白を満たしなさい」を購入、セッションが終わってご本人を捕まえ、サインを。
お話の中で著書「葬送」に触れられたのですが、これだけ挫折してると言ったら、これを機会にぜひ読んでくださいと言われたので、読もうかな(笑)
今更ですが、私の好きな作家(男性)の著書には音楽が本当に重要な役割をしています。
ジャズももう少し聴いてみようかと改めて思った次第。
この後、朗読があったのですが、朝から何も食べていなくて、ライブハウスで何か食べられると思ったのにそれもなくて、入場の時外で並んで20分も強風にさらされて足の先まで冷たくなっていて、もう限界だったので退出。
六本木ヒルズで軽く暖かいものを食べてから元気を出して、麻布十番まで歩いて帰路につきました。

昨日の模様はまた後で書きま〜す。
ノーベル賞作家の著書を谷原章介さんが朗読っていうのもあったんですよ。

この催し、全然知らなくて、通訳をしている友人に「同時通訳に入るんだけど、興味があれば」と言われて、申し込んだ。その時既に人気のあるセッションは定員に達していました。
日本ではあまりなじみがないけれど海外では盛んな様子。
こういうのなら何度でも行きたい。
しかも無料ですから驚きです。
お金は取った方がいいように思いました。
あの仕分けで国の援助がなくなったそうなので。

追記(3/7)
国際文芸フェスティバル2日目
早稲田大学井深大記念ホールにて。
最初のセッションは、
市川真人氏をメデレーターに、
チップ・キッド(ブックデザイナー、小説家)
ジョナサン・サフラン・フォア(小説家、「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」著者)
円城塔(小説家)
「これからの本をしよう」と題して電子と紙の狭間で本がどんな可能性を広げるかについて語る。
また、
デボラ・トリースマン(編集者)をモデレーターに、
ジュノ・ディアス、デイビッド・ピース、古川日出男のお三方で、
「想像力の中のTokyo」と題し、東京に魅せられた作家が作り出す世界を語る。
それぞれ自作を朗読されたが、古川さんの熱のこもった朗読(もはや演じている感あり)ちょっと引いた……。
しかも今東京は面白くなくなっていると言う。震災に言及し、人はもう忘れ去ろうとしていると。
なんでもそうだけど、一部だけを取り出して誇大に言うのはどんなものか。氏の周りには忘れてしまった人が多いのか。私の周りには忘れるも何も実際に繋がっている人ばかりだけど。
世界に類をみない東京という大都市の魅力を作品世界に反映させているディアス氏とピース氏。
外から見る東京はそうなのかも。
休憩を挟んで、
「越境する文学」
市川真人、辛島デイビッド(本フェスティバルプロデューサー)のお二方がモデレーター
ジョン・フリーマン(編集者)
池澤夏樹、ニコール・クラウス(詩人、小説家。夫はジョナサン・サフラン・フォア)
中西玲人(プロデューサー、米国大使館文化担当官補佐)の4氏
人数も多かったし面白かったと思うのだけど、時間が経ったので、忘れてしまった。
メモがどこかに行っちゃって…ゴミに紛れて捨てちゃったかも。(ずいぶん探したんですけどね〜)

途中、都電荒川線の中で小説を書いていた(これもこの日のイベントのひとつでした)いしいしんじさんが会場に登場したこともあり、時間が押し気味ではあったのですが、このあとの朗読が終わったのは予定より30分も過ぎていました。(朝から何も食べてなかったから死にそうだった)

朗読はノーベル文学賞作家J.M.クッツェー氏。
日本語朗読は俳優の谷原章介氏。
クロージングにふさわしい朗読会でした。
読まれたのはこれから出版される本の一部でした。
なので、テキストはなし。
フェスティバル初日にもクッツェー氏の朗読があったようなのですが、
通訳で入っていた友人がその時のテクストを見せてくれました。
和約は小川洋子さんの小説を読むような感じでした。
谷原さんの声はいいですね。
ゆったり気分で聴き入りました。








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2013年02月23日

読書の時間

現在は雑多な本を雑に拾い読みしている時期で、
そうなるとやっぱり面白いものが読みたくなる。
というわけで、読みました。

朝井リョウ著「何者」

大学生の就活の模様を描く本書。
我家の三人の子供たちは大学受験というものがなかった(書類審査はあった)ので、
現在の就職活動がそういうことになっているのだと驚きつつ興味深く読んだ。
PCがなければ履歴書すら出せない。
エントリーシートなるもので引っかからなければ面接も受けられない。
そんな中で互いを観察しながら疑心暗鬼にとらわれる大学生たち。
内定をもらった友人の会社をネットで調べる。
ツイッターをフォローして、相手をわかった気になる。
焦りは見せない。
就職戦線で繰り広げられる世界のなんと狭いことか。
でも今の若い人たちはそこで戦って行かなければならないんだなぁ。
ラストのおさまりどころはこんなものか。
読み始めはこれが直木賞か、と思いながらの読書になったけれど、
面白く読めた。若者の今を知るにはいいかも。
ただ、ソーシャルネットワークなどと無縁な人には状況が読めないかもしれない。
その場合、展開に不満が残る可能性大。
その面からも直木賞はどうかなという感じ。
将来性はあるだろうし、これからが楽しみといったところかな。

青山七恵著「快楽」
二組の夫婦がイタリアで過ごす時間を描いている。
他人から見れば不釣り合いな夫婦二組、四人の男女の視点でストーリーが展開していく。
文体は翻訳ものを読まされている感じ。
視点もかなり変わるのにぶれないところが、さすが芥川賞作家?
描写は文体のせいで突き放した感あり。
で何となく映像が浮かんでくるけれど、のめり込むことはなかった。
渡辺淳一が書きそうな題材、というイメージかな。
登場人物の誰にも共感できなかったし、(理解が浅いのかもしれないけど)
それって無理がありすぎだろ、って思うこともあって(もちろん私が)
最後まで読んだけど、ちょっと微妙だった。
でもこういう文体で他のものを読んでみたい気はする。

宮本輝著「三千枚の金貨上・下」
文句なしに面白かった。
宮本氏らしいと言えばそうだけど、宮本氏でなければ書けない世界。
もうどんどん引き込まれた。
主人公は斉木光生という40代のサラリーマン。(この光生という漢字が先生に読めて困った…笑)
デザインと機能性にこだわった文具の会社の立ち上げから関わっている。
事業が軌道にのり、社長から報奨として一ヶ月の休暇と旅行費用を出してもらい、シルクロードの旅へ出る。
物語は光生が帰国した日から始まる。
家に帰る前に寄った馴染みのショットバーから、肛門科の医院へ直行することになるのだから、
何とも人間臭い。そこが宮本ワールドなんだなぁ。
物語の軸は、数年前に大腸ポリープの手術で入院したときに死を目前にした老人から聞かされる話が発端となっている「三千枚の金貨」である。
同じく会社の立ち上げに関わって共にやってきた二人の同僚と
ショットバーの若いママ、バーの客、珈琲屋の主人、誰もかれもがこの世界で鮮明に実体を伴って生きている。
それがストーリーに奥行を与えているのは、宮本氏のいつもの手法。
ある所に三千枚の金貨を埋めたと言い残して死んだ老人の生い立ちが徐々に明かされていくにつれ、
完全にのみ込まれた。
夢中で読みました。
安心して読めるしね。信じているから。

もうすぐ「草原の椅子」が封切りになりますね。
これも壮大なスケールの絵になるお話だから楽しみです。
観たい映画がありすぎて、何だかどれも観ないで終わりそうで、不安。



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2013年02月15日

「空の中」

有川浩著「空の中」
民間のテスト飛行と自衛隊機が同じ空域で、時を置かず爆発事故を起こす。
自衛隊機のパイロットが爆発事故を起こす、同じ頃、高校生の息子は機影を見るために高知の浜にいた。
そこでクラゲのような不思議な生物を見つけ、家に持って帰る。
父親を亡くした息子に父親の番号から携帯に電話が入る。それはまさにその不思議な生物からのコンタクトだった。
一方、もう一人の主人公(すみません、名前を忘れました。読み終えてすぐ図書館に返したもので……)は、民間から事故の解明のため自衛隊に派遣され、事故当時に事故機の後ろを飛んでいたパイロットと会う。
そのパイロットは女性だった。彼女に同行しその空域へと飛び発ち、彼女が主張する障害物の存在を知る。
レーダーにも映らない謎の物体とは何か。
また同時に進行するパイロットの息子の方では、拾ってきた不思議な生物(フェイクと名付ける)と交信するようになっていた。
幼馴染の隣家の少女は、突然の父親の死と向き合えない彼の様子を危ういと感じているが、何もできない。
また自衛隊でも謎の物体「白鯨」と交信できるようになっていた。
白鯨はもちろん言葉は持たないが、電波を受け取り驚く速度で言葉を使えるようになった。
根気よく交信を続けている現場の人間たちの頭越しに、自衛隊幹部とアメリカは白鯨をある地点に誘導し弾道ミサイルで攻撃するという暴挙に出た。
物体はばらばらになるも消滅しないでそれぞれが一つずつの「白鯨」になる。
「白鯨」人類が発生する前からそこにあり、後から現れた人間に攻撃されたことで、生存競争だという認識で無差別に人間を攻撃するようになった。

と、SFの世界が広がっていくのだけれど、
これはみんな人間のことを書いている。
ある面警鐘といってもいい。
また親子の思い。
恋もある。
大人のファンタジーといえる壮大なストーリーは、各分野に精通してこそリアリティを持つ。
著者の自衛隊の話は本当に面白い。
この物語の要になる人物が主人公の脇に控え、いいことを言うんだ、これが。
涙もろいもんで、感情移入してぼろぼろ泣いた場面も。
ちょっと頭を休めようと思って読み始めたら、面白くて一気に読了。
いやぁ、ほんとにすっきりした〜

さて、昨日はバレンタインデー。
息子は祖母から(私の母)もらったチョコ、1個。
夫は職場の義理チョコが4個。
食べるのはほとんど私だけどさ。
頑張れよ息子。義理チョコくらい貰え〜!
(って言うか、昨日は一日家にいたし……)
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2013年02月13日

続・読書の時間

辻村深月著「ツナグ」
連作短編
死んだ人に会いたい、そんな願いを一度だけ叶えてあげると言われたら、
あなたは誰と会いたいですか?
遺伝的に不思議な力を持つ少年が、死者と生者をとりもつ使者(ツナグ)。
いくらこの人に会いたいと願っても、死者にとっても一度のチャンス。
断られることもある。(らしい)
綴られる五つの物語。
軽く読めますが、内容は深いです。
お薦め。

西加奈子著「炎上する君」
短編集
著者の想像力の豊かさにはっとさせられる八つの物語。
現実的でないと思ったら世界は広がって行かない。
表題「炎上する君」にはその通り、足が燃えている男が登場する。
どの短編も主人公は私たちなのかもしれない。

高村薫著「冷血上・下」
「64」が分厚いと恐れをなしたのに、
何とこれは二段組みの上下巻!
一家四人の強盗殺人事件。
合田刑事はすでにデスク(というのか?)で現場には出ない。
事件は二人の殺人犯の犯行前の行動から、それぞれの視点で語られ、
被害者の家族、歯科医夫婦と国立大付属の小学校と中学校へ通う子供たちの生活も語られる。
ネットに共犯者を求めた主犯の男、ネットを見て手を挙げた男。(前科がある)
殺人を犯すまでの経緯が詳細に描かれる。
合田の殺人犯に対する目もまた。
検証から、裁判まで驚くほど丁寧に書かれている。
生と死の境を覗きこんだような気分。
ものすごく重いけれど、とても面白い。
集中力がかなりいったけど(苦笑)
近年、高村さんの著書はこういうのばっかり。
冒頭、ちょっと理解しがたい男たちの言動に、苦手かもと思って挫折しそうになったけれど、
上巻の半ばあたりからやめられなくなってあとは一気に集中して読了。

柴崎友香著「わたしがいなかった街で」
派遣で働く36歳の主人公。何度も引っ越しをしていて、現在は世田谷線沿線に住む。
そして祖父が昔働いていたのが広島のホテル。呉は夫の実家があった所で、私も何度か行っている。
具体的な描写が多いので、比較的に良く知っている私には特に面白かったかもしれない。
仕事はしているが、社会と一線を引いているような主人公は、家では、戦争のドキュメンタリーを観て過ごすことが多い。持ち歩くのは作家の日記。空襲のことが書かれている。
主人公は街を見て、そこが空襲で焼けた場所だという目で見ている。
主人公に関わるシングルマザーの友人、大学時代の仲間で放浪生活をしている男。
登場人物たちとの絡みはリアリティがある。

角田光代著「紙の月」
タイの町から始まる物語。
(さすがに角田さんはタイの雰囲気を言葉にするのが上手い!!実際は知らないけど・・・)
梨香は働いていた銀行で不正をして数千万ものお金を自分のものにし、指名手配されいている。
まじめで夫の言葉に違和感を感じながらも反論することなく過ごしていた。
きっかけは顧客の孫である青年との出会い。
その青年に貢ぐうち、金銭感覚がなくなっていくというこわ〜いお話。
人って弱いものだと改めて思う。
お薦めです。

長編が続いたので、今はちょっと軽めの有川浩(これも長編ではあるけれど)を読んでいる。
読んですぐ感想を書かないと、まとめて書くのはやっぱりしんどいなぁ。。。
と言いつつ、いつもためこんでしまうこの性格。何とかならんものか。(ため息)
やっとすっきりした〜


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2013年02月12日

読書の時間

昨年末から今日までほぼ一ヶ月半で読んだ本

中島京子著「のろのろ歩け」
北京、台湾、上海、それぞれを舞台に描かれる中編集。
「北京の春の白い服」
ファッション雑誌創刊のため北京にやってきた編集者の主人公。
思った以上に過酷な状況の中で、アメリカ人の彼氏との会話を挿入しながら、現地スタッフとの関わりが描かれる。(著者の経験もあるようです)
「天灯幸福」
失恋した主人公が、昔、台湾に留学していた母の、当時の恋人を訪ねて台湾を旅する。
「時間の向こうの一週間」
夫の転勤で上海についていった妻。家探しをする状況になってしまう。異国での戸惑いと発見。

それぞれの街や主人公に関わる人物描写。
そして知らなかった自分に出会う。
街の描写は目の前に浮かぶようでした。

小川糸著「喋喋喃喃」
谷中で着物のアンティークショップを営む主人公。ある時ひとりの男性客がやってくる。
少しずつ距離を縮めていく二人。その過程が、主人公の丁寧な暮らしぶりの中で描かれる。

早く言えば不倫の話。
谷中という舞台と着物のお店という設定が物語の色合いを紡ぎだしている。
美味しいものもいっぱい出てくるし、谷中で有名なお店の名前も出てきます。
リアリティがありました。
町の雰囲気がわからない人にはちょっとこの感じは伝えにくいのですが。
不倫が美しく切なく描かれて、いいと思ったのは「風の恋盆唄」以来かも。
物語は登場人物だけでなく、舞台設定も大切と思わせられる本書でした。

宮本輝著「海辺の扉」(再読)
不注意で息子を死なせてしまった男の物語。
舞台はギリシャ。
ストーリー展開がいいので、すらすらと面白く読めます。
再読ですが、もうずいぶん前に読んで実家に置いてあり、正月に帰った時に読む本がなくなって再読した次第。

島本理生著「七尾のために」
中学生の主人公は通っていた女子校になじめず、東京の中学へ編入する。
そこで出会った七尾に誘われて美術部に入り、学校生活を送る。
七尾の言葉に嘘を感じ始める主人公の私は七尾の言動に翻弄される。

中学生の微妙な心理を鮮やかに描き出している。
もう一作「水の花火」が収録されている。
どちらも若い時にしか書けないものかもしれない。
ちょっと息苦しいような感覚を持った。

横山秀夫著「64」
現在は県警の広報官である主人公。かつて刑事として関わった誘拐事件の時効が間近に迫っていた。身代金を取られた上に誘拐された少女が殺害されるという未解決の事件である。
警察庁長官がその被害者遺族を訪問することが伝えられ、それをきっかけに水面下で何かが始まっている気配を主人公は感じ取る。そしてそのタイミングに誘拐事件が発生する。

警察の広報という仕事、実名報道の是非、警察内部のせめぎ合い。
色んな要素がしっかりと詰まった大長編です。
ものすごく分厚いので時間がかかるかと思ったけれど、先が気になりぐんぐん引き込まれて読んだ。
ただ、不満がひとつ。
ネタバレになってしまうので書きませんが、無理やり納得するしかなかったかな。
それに感じ方はひとそれぞれだものね。
面白かったです。

ちょっと目が痛くなってきたので、
以下はまた。

辻村深月著「ツナグ」
西加奈子著「炎上する君」
高村薫著「冷血上・下」
柴崎友香著「わたしがいなかった街で」
角田光代著「紙の月」

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2012年12月04日

読書の日々

有川浩著「ラブコメ今昔」「クジラの彼」
自衛隊を舞台にしたシリーズの恋愛短編小説。
文庫の装丁もタイトルも、どうなの?と思いながら手に取った。
短編で読みやすいということもあったけれど、
これは半端な取材じゃ書けない!とまず感嘆。
とてもリアル。
モデルらしき人がいる場合もありそう。
楽しくて、しかも感動の場面も多々。
自衛隊をこういった側面から切り込む発想もすごい。
お役目ご苦労様と頭が下がる思いも。
お薦めです!

角田光代著「空の拳」
ボクシングジムが舞台の長編。
主人公空也は出版社勤務、入社二年目。
異動の内示があった翌日の朝から物語は始まる。
入社当時から希望している文芸編集部へは今年も行けず、
しかもあろうことかスポーツ誌、それもボクシング雑誌「ザ!拳」の編集部。
本にまみれて過ごした学生時代。スポーツとは無縁の空也が、小説に関わりたくて目指した出版社だった。
編集部に配属になり、編集長から取材するジムへ入会しろと突然言われる。
世間から切り離されたような地下にある「鉄槌ジム」
そこで編集長から聞かされたプロボクサー立花と出会う。
幼少時から親戚をたらいまわしにされ、果ては少年院送り。天涯孤独のボクサー。
空也は実際に立花の試合を観戦しているうちに惹かれ、記事を書く。
ところが立花の経歴は真っ赤な嘘だったことが明らかになる。
空也の立場は、立花は、ジムはどうなる。

こんなストーリー展開なのですが、
他にも魅力的なボクサー、練習生などが登場。
後半に出てくる立花のトレーナーになるレコード屋の主。
立花を取り巻くジム関係者、出版社の同期の面々。
だれもが生き生きと動いている。
本編は試合の場面にかなりのページをさいてる。
その臨場感に、知らぬうちに選手を応援する気持ちになったりして驚く。
好きになれば面白いんだろうなと思いつつ、やっぱり痛いのは苦手だな。
それはともかく、読み始めてすぐに、取材だけじゃないなと思ってたら、
やっぱり十年以上前から輪島功一ジムに通ってるんですね。
あーすごい。角田さんだからかけるんでしょうけど。
ボクシングか〜苦手だな〜と思って読み始めたのに、面白くて、面白くて。
後半は一気でした。

堀江敏幸「なずな」を読み始めていたのに、こっちにかかりきりになって「なずな」は一旦返却。
また借り直します。
長編の面白いのを読むと、次に読むのはよほど面白くないとだめだから、しばらくエッセイとかにするかな。


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2012年11月18日

読書の日々

先月から読んだ本。

綿谷りさ「夢を与える」
角田光代「薄闇シルエット」
東野圭吾「虚像の道化師」「禁断の魔術」
三羽省吾「傍らの人」
湊かなえ「往復書簡」
小池昌代「弦と響」

東野圭吾については、二冊とも短編集で、
もちろんそれなりに面白いけど、ま、職人技ですな。
三羽省吾は初めて作家で、これも短編集で、結構いいじゃんと二作目にとりかかったら、
微妙……
岡山出身の作家だけあって会話が全部岡山弁というのもあり。
でも私は好きじゃないな。中途半端?いや、そうじゃなく雰囲気がいやなのかな……。
耳障りな感じ。

湊かなえ「往復書簡」。
「十年後の卒業文集」
「二十年後の宿題」
「十五年後の補習」
往復書簡で綴られる三つの物語につながりはありません。
手紙のやり取りの中で明かされていく十年前、二十年前、十五年前、それぞれの真実。
短編ですが、結構面白かった。
ぎりぎり三編で良かった。(もっとあったら飽きてしまう。きっと)
で、映画になったのは「二十年後の宿題」
先日観てきました。
原作ではなく原案ですね。
全く別物です。
よくぞここまでの話にした!って感じです。
吉永小百合だから良かったのでしょう。
教師だった主人公が二十年前を振り返り、分校で受け持ちだった六人のその後を追う内容です。
映画の方は自らが六人を訪ねることで、
原作の方は六人のうちの一人に頼んで現在のみんなの様子を訊くというストリーで展開します。
どちらもそれぞれの面白さがありますが、
映画はさすがに感動ものに仕立てあがっていました。
にしても吉永小百合は若い。二十年前と変わらなくても違和感がないもの。

小池昌代「弦と響」
弦楽四重奏の鹿間カルテット、最後の舞台を核に、
登場人物の語りで綴られる本書。
小池さんらしい色合いと匂いと音がする文章で、音楽を楽しんだ気になりました。
詩人でもあるだけに、言葉の選択が素晴らしい。
音を言葉にして伝えるって本当に難しいですものね。
私も俳句に弦の音を何とか詠み込みたいと奮闘していますが、
なかなか簡単にはいきません。(毎月の投句の中に一つは音楽を入れるよう努力してます)
クラシック好きの方には特にお薦めです!

さっき図書館で予約した本を取りに行ってきました。
堀江敏幸「なずな」
すばるに二年間連載したもの。
ぶ、分厚い。
読めるだろうか……。






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2012年10月04日

夏から秋への読書

角田光代著
「それもまた小さな光」

今日もラジオから、モーニングサンシャイン・ナビゲーターの竜胆美帆子の声が流れる。
話題は日常の身辺雑談のようなもの。
毎朝務めるデザイン会社でそれを聴く仁絵35歳。
幼馴染の雄大とは思春期になっても「照れ」もなく、軽口を交わし、
お互いの初体験や、初めての恋人も、のめり込んだ恋愛も知っている。
35歳でどちらも独身だったら結婚しようと約束したらしいが、仁絵は覚えていない。

すぐ近くにありそうな日常が描かれています。
切なさと懐かしさが湧きあがってくる物語でした。

  *  *  *

松村栄子著
「ひよっ子茶人茶会へまいる」
著者が京都に移り住んでから始めた茶道にまつわるエッセイの数々。
京都に行きたくなります。
お菓子が食べたくなります。

同じ著者の
「風にもまけず粗茶一服」
以前読んだ「雨にもまけず粗茶一服」の続編。
めちゃくちゃ面白かった。

  *  *  *

海音寺潮五郎著
「茶道太閤記」

豊臣秀吉と千利休。天才とも言える二人を中心に、戦国の武将たちや、茶々(後の淀君)や利休の娘など二人の周囲の人々を絡めて描いた時代小説。
淡々と描かれているので物足りないむきがあるかも。
でも面白かった。

  *  *  *


直木賞受賞作
辻村深月著
「鍵のない 夢を見る」

これ、いつ読んだんだったかなと記憶を手繰る。
短編集で、なかなか面白く一気に読んだんだけれど、印象に残っているものが何もない!!??
直木賞なのに?そんなわけないでしょう。
手元にあるので再読してみようかな。
ということで、読後感想はなしですみません。
(ぱらぱらと拾い読みしても何も甦ってこない…)

  *  *  *


芥川賞受賞作
鹿島田真希著「冥土めぐり」
裕福な子供時代を過ごし、一生それが約束されたものだと信じていた母親に育てられた奈津子。
弟もまた母親に愛され自分はどんな可能性もある選ばれた人間だと信じていた。
父親が亡くなり、弟の借金のためマンションを手放してもなお、母と弟はお金だけに執着し、
価値観を奈津子に押し付け、奈津子からすべてを詐取しようとしている。
そんな生活の中で出会った太一。
結婚はしたが、ある時発作に見舞われ脳に電極を埋め込むという大手術を受ける。
働けなくなった太一の面倒を見る生活を続ける奈津子は、
区の保養所が、かつて母親に連れられて行った高級リゾートホテルだと知り、
一泊5,000円のそのホテルに泊まる旅に、太一を連れ出す。
母親と弟の理不尽な横暴さに縛られていた生活を思い出しながらの旅で、
奈津子は太一が自分にとっての救世主だったと気づく。

文中に波の音が通奏低音のように聞えるとあったが、
この物語も初めから何か不穏な音が通奏低音のように流れているかのようだった。
暗い話だけれど、太一の描かれ方が良く、緊張が緩む瞬間がある。
特に面白い物語ではなく、むしろ憂鬱になる話。
それでも読後感は悪くなかったかな。

  *  *  *


楊逸著
「すき・やき」
姉を頼って日本の大学に留学した主人公虹智。
二年が経とうとし、やっとアルバイトをしてもいいと姉から許可がでて、
かつて姉もアルバイトをしていた高級牛鍋料理屋で働くことになる。

日本社会で働くということや、従業員、店に来る客たちを描きながら、次第に慣れていく過程が生き生きと描かれていて面白い。
特に制服である着物の着付け、客の接待の場面は秀逸。
作法の勉強にもなりそう。
大学で虹智を付け回す韓国人の柳の存在もいい。
けれど、比喩は健在だし、語彙のバランスが何とも言い難い。
それが魅力でもあるのかもしれないけれど。
時々放り出したくなる。
著者には優秀な編集者がついているはず。
あえて書かせるのが狙いなのか。
本書は多分文芸誌で読んだ記憶があって、
今回は文庫になっていたので買ったけれど、それはどこにも書いてなかった。
勘違いかな。
まあ、でも嫌いじゃないからこれからも読み続けるかも。
何かほっとさせられる文体でもあるから。

  *  *  *

水村美苗著
「母の遺産」

佐野洋子著
「シズコさん」

池井戸淳著
「ロスジェネ逆襲」

水村美苗著
「本格小説」

以上は後日。
読んだ本の題名だけ書いていたので、読後感を甦らせるのに時間がかかって。
読み終わったばかりの水村さんの著書は結構強烈なので、まだ覚えていられそうだし、
佐野洋子さんの母との関係にまつわるエッセイもかなり強烈で。
池井戸さんのは銀行を舞台に描かれる痛快な話。
合間を縫って、エッセイを拾い読みしている状態が続いています。
で、続きはまたということで。
土曜日から俳句展、火曜の深夜にはロサンゼルスに向けて出発です。
不覚にも風邪を引いてしまった……。
治さねば。




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2012年08月27日

夏の読書

7月末くらいから読書感想をアップしていなくて、
もうずいぶん溜まっています。

伊集院静香著「星月夜」
 
東京湾で発見された東北出身の若い女性と、出雲の鍛冶職人の遺体。地道な捜査が始まる。
女性の勤め先から被疑者が浮上する一方、老人の仕事場には何かを作った形跡があった。
事件の鍵を握るのは老人の孫娘、黄金色の銅鐸、そしてはるか昔の「星月夜」の記憶……。
物語は時を遡り、人の哀しさを美しい光景とともに謳いあげます。

伊集院氏、初めての推理小説。 
王道を行く、本格推理小説です。
一気に読みましたが、連載だったせいか、きれぎれの印象。文体に違和感を持つ部分も。


恩田陸著「夢違い」

夢を映像として記録する「夢札」。夢を解析する「夢判断」を職業とする浩章は、亡くなったはずの女の影に悩まされている。予知夢を見る女、結衣子は浩章と関係があったが、かつては兄の恋人だった。
そんな折、浩章のもとに奇妙な依頼が舞い込む。各地の小学校で頻発する、集団白昼夢。教室に侵入してきた何者かを恐れて狂乱に陥った子供たちの「夢札」を見た浩章は、そこにあるものをみつける。
悪夢を変えることはできるのか。夢の根源を追いかけて奈良の吉野に向かう浩章。
浩章を待っていたものは何か。

近未来的なお話。
構成と展開に引き込まれる。
夢を実際に映像で見ることができる。
面白い発想ですよね。
わくわくしながら読了。



東野圭吾著「マスカレードホテル」

都内で起きた連続殺人事件。
現場に残されたあるものから、
次の犯行現場は超一流ホテルとされ、殺人を阻止するため、警察は潜入捜査を開始する。
容疑者もターゲットもわからないまま、ホテルマンに化ける刑事。
一流ホテルのホテルマンに仕立て上げるために彼を指導する教育係。
彼女の厳しい指導に反発しながらも次第にホテルマンらしい責任感を身に着けていく。

刑事新田と、フロントスタッフの山岸のやりとりが面白い。
ホテル内で起きる様々な事件を解決しながら展開するストーリー。
そして次第に近づいていく二人の関係。
一流ホテル内部のエピソードも面白い。
ハラハラ、ドキドキのエンタテイメント。



森下典子著「前世への冒険」

これは小説ではない。
婦人雑誌からの依頼を受けた著者が、前世が見えるという人の元へ行き、
そのルポルタージュを書くという企画。
前世が見えるなどはなから信じていない著者が次第にのめり込んでいく様が克明に描かれるが、
のめり込む一方で、疑いも常に持っている。
著者の前世がデジデリオというイタリアの彫刻家だと言われ、著者は不思議な縁に導かれイタリアへと旅立つ。
日本にはない文献を見つけ、記されていることが、前世見をする女性の言葉と一致したり、ルポは次第に推理小説のごとき様相を見せ始める。

ルネサンスの天才彫刻家デジデリオは謎に満ちていた。
その謎を解明するため、前世見の透視を手掛かりに奔走する著者。
冷静に淡々と、時にドラマチックに書かれるルポルタージュは小説よりも面白いかも。
著者が自分の前世を信じたかどうかは別として、こちらまで一緒になって謎を追いかけるような気分で読んだ。
面白かった。



杏著「杏のふむふむ」

Webちくまで連載されるコラムの単行本化。
これは前出森下典子著「前世への冒険」につながる部分があって、
同時に借りた本。
子供時代、モデル修業時代、日常の身近な話題など、人との出会いを通じて感じたことを彼女らしい文体で綴っている。
「前世への冒険」はBSで半ノンフィクションの形で映像化され、杏さんが森下さんを演じている。



「それでも三月は、また」

ニュースやインターネットの報道とは違う方法で3.11を表現し、世界に発信したい。
作家であり編集者の Elmer Luke 氏と、作家・翻訳家の辛島デイヴィッド氏の呼びかけて生まれたアンソロジー。
谷川俊太郎の詩をはじめ、多和田葉子、小川洋子、川上弘美、重松清、池澤夏樹、村上龍、佐伯一麦等の短編が収録されている。
3・11については人それぞれの受け止め方があり、
様々な物語が生まれる。
読むに堪えないものもあった。
意欲的な企画ではあったけど。
印税の一部は震災復興のために使われるそうです。


今日はここまで。
まだまだあるので、続きはまた明日!








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2012年06月20日

読書の時間

井上荒野著「キャベツ炒めに捧ぐ」

東京の私鉄沿線、小さな町にあるささやかな商店街。
そこに「ここ家」がある。
美味しいご飯とお惣菜のお店だ。
オーナーの江子、共に働く麻津子、郁子、三人とも60代。
各章はお惣菜のタイトル。
ロールキャベツ、コロッケ、がんも、鯵のフライ等々。
江子は友達とダンナが恋仲になってしまい離婚。未練なのか今でも二人に電話をする。
麻津子は思い続けている幼馴染がいる。
新入りの郁子は夫とも子供とも死に別れている。
お惣菜を通して、三人の過去や今が語られる。

荒野さんの食べ物の小説は面白い。
料理、もかもしれないけれど、食べることが好きなのでしょう。
食べるって生きるには欠かせないこと。
身近な素材で登場人物を魅力的に描いている。


     *   *   *

川上未映子著「すべて真夜中の恋人たち」

フリー校閲者の主人公、入江冬子、34歳。
人づきあいが苦手で孤独が当たり前のように生きてきた。
ただ一人友人と言える石川聖は大手出版社の校閲局勤務で、冬子に仕事依頼をする担当者であった。
ある日、冬子はカルチャーセンターで初老の男性、三束と知り合う。
高校の物理の教師という三束に惹かれていく冬子。
二人の距離は縮まってくるかに思えたが……。

聖は相手が上司であろうと男性であろうと、思ったことを口にする、所謂できる女。(けれどトラブルメメーカーっぽい)
冬子に対しても同じだが、後半で、自分の考えをまともに話せない冬子に、「あなたを見てるとイライラする」と感情をぶつけたりする。
リアリティがある。
対照的な二人だけれど、もしかしたら人の中にはそれぞれの部分があるのかもしれないと思う。
初老の三束への想いが募る過程もなるほどと思う。
聖の言動を暴露する人もいそうだし、
登場人物がよく描かれている。
川上さんの著書は「ヘブン」以来。
結構集中して読了。


    *  *  *

湊かなえ著「境遇」

養護施設で育ったという共通点を持つ、親友同士の陽子と晴美。
晴美のまだ見ぬ母親との手がかりにもなる打ち明け話を聞いた陽子は、絵本に書くが、それが賞を取り、話題になる。
陽子の夫は県会議員で汚職疑惑で事情聴取を受けたことがあり、
姑と後援会長はイメージ回復の為に陽子を利用しようとしている。
取材やサイン会に忙しくしてしたある日、陽子の息子裕太の行方がわからなくなり、「真実を公開しろ」という脅迫状が届く。
政治家の妻であることで警察に知らせることも止めれられる陽子。
次第に真実が明らかになる。

少し前にドラマで観ましたが、
ドラマの方が良かったかも。
本書の文体は告白も混じるもので、それがバランス的に、う〜んという感じ。
集中力が削がれた感あり。
物語としては面白かったけれど、作りすぎと思わせられるのは文体のせいかも。
まあ、普通に読めました。





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2012年06月02日

小川洋子三冊

「凍りついた香り」

調香師の弘之が仕事場の調香室で自殺を図った。
同棲して丸一年が経っていた。
霊安室にやってきた弟から弘之の知らない顔を知らされ、
涼子は弘之の過去を探す旅に出る。
目的地のプラハである真実を突きとめる。

弘之が涼子の為に調香した香水「記憶の泉」
弘之の痕跡を求めながら非現実的な世界へと踏み込んでいく涼子。
ひんやりとした空気と香りがいつまでも残っているかの読後感。


「沈黙博物館」

博物館専門技師としてある村の屋敷を訪れた僕。
雇い主は屋敷の主である老婆だった。
面接の末、老婆の意思通りの博物館建設に取り組むことになる。
博物館に展示されるものは、人が生きていた証、死者の形見であった。
日増しに弱っていく老婆の代わりに死者の形見を手に入れる為、
危険な窃取に手を染めていく。

老婆のコレクションの異常さは、小川さんならではかも。
冒頭からどこの国ともどんな村ともわからぬままに、風景ができあがっていった。
そのままその世界にどっぷり。


「密やかな結晶」

ある日突然人々の記憶と共に物が消滅していく島。
消滅したものは、たとえ言葉があったとしても人々には理解できない。
何かをなくした小説ばかり書いている私も、言葉や記憶を失くしていく。
島の住人の中には記憶を失わない者がいることを知った私。
秘密警察に連れて行かれ生きて帰ることのなかった母親もその一人であった。
彫刻家であった母親は記憶狩りから守った物を彫刻の中に隠していた。
それを見つけた時、ただ一人私の小説を読んでくれる編集者も記憶狩りから逃げて、
私の家の隠し部屋に潜んでいた。
生きて出ることのない小さな部屋で、私と編集者の濃密な時間が流れる。

消滅という現象が静かにすすむ島の生活。
それだけで、もう著者の想像力の豊かさに圧倒される思い。


長編三冊、この順番で読みました。
独特の世界を綴る、どれも読みごたえのある物語でした。
小川さんて本当にすごい。
短編もいいけど、長編は尚更。
リアリティのある非現実の世界を十分楽しませてくれた。
もっとも、流れるものは冷たく暗いので、元気な時に読むのがお薦め。
でも読後感はどれもとても良かった。
この中でどれか一冊と言われたら、「密やかな結晶」かなぁ。
主人公が書く、お話の中の小説もとても面白かったし。
でもラストはちょっと哀しいので、
ラストが明るいもの(この三冊で言えば)なら「凍りついた香り」でしょうか。







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2012年06月01日

ひさしぶりによしもとばなな

よしもとばなな著「スウィート・ヒアアフター」

恋人と一緒に事故に遭い生死を彷徨った主人公、小夜。
アーティストだった彼の作品を管理することを続けている。
臨死体験の後、あの世の人の姿が見えるようになった小夜は、それをきっかけに古いアパートへ移り住む。

震災後に書かれた本書。
あとがきでよしもと氏は「この小説は今回の大震災をあらゆる場所で経験した人、生きている人死んだ人、全てに向けて書いたものです」と書いています。
恋人の母親と話す時、主人公小夜子は確かに罪悪感を感じている。
彼でなくどうして自分が生き残ったのかと。
被災地の惨状から程遠い所にいても感じた人はいるはず。
なぜ、彼らだったのだろうって。
そして生き残ったものは何をすればいいのだろうって。
沖縄バーにいつもいる女の幽霊。
取り壊しが決まっている古いアパートの窓辺に佇む女の幽霊。
生と死を見つめながら再生していく小夜子。
途中までちょっとしんどかったけれど(よしもとさんのはいつもそんな感じ)
後半からは引き込まれた。



井上荒野著「だれかの木琴」

平凡なサラリーマンの夫と中学生の娘を持つ、平凡な主婦、小夜子。
たまたま入った美容室で担当になったスタイリストの海斗から受け取った一本の営業メール。
「またお店でお会いできるのを楽しみにしています」
海斗にとってあくまで営業でしかないメールのやりとりから、小夜子は海斗への執着をエスカレートさせて行く。
小夜子の行動は家族や海斗野恋人までも巻き込んでいく。

ふとしたことで壊れていく主婦を描く、ちょっと怖い話。
今、荒野さんの「キャベツ炒めに捧ぐ」を読んでいるけれど、同じ作者とは思えないほど世界が違う。
(間をあけて良かった)
主人公の気持ちの変化、共感する人も多いのではと思わせられる。
うまいです。



池井戸潤著「かばん屋の相続」

急逝した「松田かばん」の社長の遺言には、会社の株すべてを長男に譲るとあった。
だが、会社の手伝いをしていたのは次男だった。亡くなる直前に書かれた遺言状にはどんな意図があったのか。表題作「かばん屋の相続」を含む短編集。
他に、会社倒産にまつわる話「十年目のクリスマス」
融資問題を扱った「セールス・トーク」等。

作者ならではの物語。
安心して読めます。
面白かった。
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2012年04月21日

読書の時間

角田光代著「彼女のこんだて帖」

小説+料理。
登場人物を繋いでいく連作短編集。
食べることって、生きていく時間の中で大きな位置を占めていると実感する。
食べることが好きで、読書の好きな人にはお薦め!!
巻末には各章に出てくる料理のレシピが写真付きで掲載されている。
ちょっと作ってみたくなる。
そして不思議と元気になる。
そんな本。

   * * *

東野圭吾著「ナミヤ雑貨店の奇跡」

時空を越えて交わされる悩み相談と回答。
主を失った雑貨店が過去と現在を結ぶ。
結末で明かされる真実。
心温まるファンタジー。
今までの東野作品とはちょっと違った趣で、楽しく読了。

   * * *

伊集院静著「いねむり先生」

愛する妻を失い苦しむ主人公が出会った先生。
先生との交流を通して光を見つける。
伊集院氏の自伝的小説。
純文学の色川武弘、ギャンブルの阿佐田哲也。
二つの名を持つ先生もまた内なる苦しみを抱え、
主人公の苦しみを理解して手を差し伸べる。

ギャンブルの話かなと思い気が進まなかったのに、
読み始めたら一気に読了。
ちょっと想像もつかない世界です。
引き込まれました。
泣けました。
お薦め。





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2012年04月03日

芥川賞作家のエンタテイメント他いろいろ

松村栄子著「雨にもまけず粗茶一服」
武家茶道家元のあとつぎを放棄して家を出た主人公遊馬18歳。
バンド仲間と共に京都へ。
あまりの性格の悪さに仲間に見限られ独り京都に残ることになり、
一文無しの遊馬は素性を隠してアルバイトを始める。

ユニークな京都の茶人たちとの出会いを通して、
鍛えられていく少年の成長物語ですね。
安心して楽しめます。
特に茶道に興味があれば尚更。
お薦め。

   *  *  *

西加奈子著「しずく」
短編集
表題作「しずく」
飼い主の夫婦が別れることになって、離れ離れになってしまう猫のフクとサチの物語。
恋人の娘との一日を描く「木蓮」
夫との思い出が詰まった古い家を小説家に貸すことになった「灰皿」
等々ちょっぴり切ないお話の数々。

いいお話ばかりだったけど、な〜んか物足りない。


   *  *  *

「はやぶさ遥かなる帰還」のノベライズ。
一気に読了。
でもこれなら映画の方がいいかも。
今、山根一眞著「はやぶさの大冒険」を読み始めた所。
こっちは読み応え有りそうです。

先日、また渋谷のプラネタリウムに行きましたが、
時間の関係でやっぱり「はやぶさ」は観られず。
またの機会に。

   *  *  *

宮部みゆき著
「誰か Somebody」
とあるマンションの前で起きた自転車による死亡事故。
大企業の会長の娘と結婚し、会社のグループ広報室で働く私こと杉村三郎は、
義父からその事故で亡くなった元運転手の娘たちの相談に乗って欲しいと言われる。
娘たちに頼まれたのは亡くなった父親の半生を本にするのを手伝うことだった。
結婚を控えた控え目な長女、活発で行動力のある妹。
二人の思いはすれ違っていて、私は困惑する。
探っていくうちに明らかになっていく人それぞれの事情。
事故現場から逃げた自転車に乗っていたのは少年だったらしいこと。
義父だけでなく私も信頼していた運転手の過去。
ラスト近く、溢れるように出てくる衝撃の真実。

買った日の夜に読了。
やっぱり宮部みゆきは面白い。


   






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2012年03月14日

アートの力

まずは本の紹介です。

西條剛央+ふんばろう東日本支援プロジェクトおたより班=編(大和書房)
「忘れない。」〜被災地からの手紙 被災地への手紙〜

ふんばろうの物資支援のしくみは、
ホームページに現地で聞きとってきた必要な物資とその数を掲載し、それをツイッターにリンクして拡散し、それを見た全国の人から直送してもらい、何をどれくらい送ったかの報告だけは受けるようにし、必要な個数が送られたらその物資に線を引いて消しておくというものです。
必要としている人に必要な物資を必要な分、直接送ることができる。
物を直接送るので、送り手の住所や名前が明記されます。すると送ってくれた人達にお礼の手紙が届いたり、電話がかかってきたりします。
そこから継続的に支援を続ける方がたくさん出てきました。
本書の一章ではそんな往復書簡が収められています。
胸を突かれる多くの言葉に触れました。
これを読んで被災された方々の気持ちがわかったなどとは決して言えませんが、
お気持ちの一端に触れることはできます。

さて、ふんばろうのおたより班が発足するに至った西條さんの思いには、
全国から寄せられた手紙を被災地に届けるプロジェクトを独自に立ちあげた中村佑子さんの存在があります。
津波でおじ様を亡くされた西條さんへ中村さんがお悔やみの言葉と一緒に渡してくれた絵葉書。
それは杉本博司氏の護王神社のガラスの階段でした。
直島の護王神社には本堂の地下に石室が作られています。
細いトンネルを抜けてその石室に入るとガラスの階段が本堂へと続いているのです。
その絵葉書を見て、西條さんはどこか救われたような気持ちになったと書かれています。
「おじさんはこういう光の階段を登って行ったのかもしれない」と。
いつも持ち歩き、時々出して眺めたそうです。
そして、葉書や手紙は相手にうまく届きさえすれば、離れていても心に寄り添う支援になりうると実感したとのことでした。

護王神社の光の階段の写真は1ページを使って掲載されていました。
初めて直島アートサイトの護王神社に行った時、(3、4回行っています)
ベネッセハウスの学芸員の方に案内してもらいました。
外は現在、石室は過去、そしてガラスの階段の先にあるのは未来。
そんな話でした。(その時の私の記事
未来に向かうということは光に向かって行くことなんでしょうか。

河合隼雄さんの「望みがない時はひかりだ」の話がジョークなんですけど、
余裕みたいなものが感じられ、救われる気がしました。

もう一冊紹介しておきます。
文芸春秋臨時増刊号
「3・11から一年 100人の作家の言葉」
まだ拾い読みで全部を読み切ってはいないのですが、
作家それぞれの震災とその後が書かれていて、とても興味深く読んでいます。




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posted by strauss at 00:45| Comment(0) | 本、雑誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月11日

読書の時間

小川洋子著「海」短編集

恋人の家を訪ねた青年が、夜、彼女の小さな弟と語る表題作「海」
弟は海からの風が吹いて初めて鳴る「鳴鱗琴(めいりんきん)」という楽器を演奏することができると言う。

ウィーン・6日間フリープランのツアーに参加した私と、ホテルで同室になった琴子さん。
彼女は養老院の付属病院で死の床に着いている昔の恋人を訪ねるためにツアーに参加したのだった。
一緒に病院を訪ねることになった私。琴子さんと共にその恋人を看取る。
「風薫るウィーンの旅六日間」

和文タイプ事務所に勤める私。
欠けた活字を新しいものに交換することになり、
私は初めて建物に三階があり、そこに活字管理人がいることを知る。
「バタフライ和文タイプ事務所」

他に「銀色のかぎ針」「ひよこトラック」「ガイド」

さすが小川さんだなぁと感嘆しながら読みました。
どの短編も現実にはないのにリアリティをもった世界が広がっている。
お薦めです。

    *  *  *

田中慎弥著「切れた鎖」
「不意の償い」「蛹」「切れた鎖」

田中氏ならでは(?)の、短編。
どれもしっかり読みましたが、私には手に余る感じ。

    *  *  *

「生きるとは、自分の物語をつくること」
小川洋子さんと故河合隼雄さんの対談。

話は物語から、カウンセリングまで、いい対談でした。
改めて河合さんの死が惜しまれます。

ある一節。
河合:「望みがない時にどうするか」という有名な話。僕は「望みを持ってずっと傍にいる」ことが大事だってさっき言いましたが。「望みがない時はどうするんですか」って聞かれたんです。すると僕の目の前におった人が「のぞみのない時はひかりです」みたらね、新幹線の売場なんです(笑)。あんまり感激したから「あっ、のぞみの次はひかりだ」って言うたらね、向こうはびっくりして。「こだまが帰って来た」って(笑)。僕はこういう話するのが大好きなんですよ。

    *  *  *

大沢在雅著「鮫島の貌」

ご存知新宿鮫の刑事鮫島が登場する短編集。
亀有の両津さんが登場したりして(鑑識の藪の幼馴染という設定)面白く読みました。
新宿鮫のファン必読!?







それぞれの3・11
posted by strauss at 22:07| Comment(2) | 本、雑誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする